新日本空調及び原子力事業部紹介
新日本空調株式会社は1930年に米国キャリアコーポレーションとの提携により設立された東洋キャリア工業株式会社からスタートし、1969年に同社の工事事業部を分離独立し、現在の新日本空調株式会社となった。
1935年満鉄特急[あじあ号]に世界初の全列車空調施工、1936年関釜連絡船[興安丸]に世界初の全船空調施工、1968年わが国初の超高層ビル[霞が関ビル]を施工するなどの実績を持つ。
また原子力の分野では、1957年に日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)JRR-1にて我が国初の原子力空調を施工して以来、今日までBWR型原子力発電所、高速増殖炉、新型転換炉、再処理施設、ウラン濃縮施設、ならびに廃棄物処理施設を含む原子力関連施設の設計・施工・保守・改修に携わるなど、日本を代表するリーディングカンパニーである。
■会社概要
商 号:新日本空調株式会社
Shin Nippon Air Technologies Co.,Ltd
設 立:1969年10月1日
本 社:東京都中央区日本橋浜町2-31-1 浜町センタービル
原子力事業部:神奈川県横浜市磯子区中原1-1-34
事業内容:空気調和、冷暖房、換気、給排水、衛生設備等の設計、監理ならびに工事請負
原子力施設特有の要求から生み出された独自開発品の一部を以下に紹介する。
■開発製品
①. 浸水防止ダンパ(ジャバッShut)
津波や洪水・ゲリラ豪雨などによる浸水発生時に、空調ダクトから施設内への水の浸入を食い止めるダンパを開発した(特許第5522869号)。
各種ビルやプラントにおける機械室や保管庫などの重要な部屋は、機器の重量や地震の影響を考慮して地下に配置されることが多く、またこれらの施設では空調用の吸排気口が地上付近に設けられていることがある。
津波や洪水、近年増加しているゲリラ豪雨などの災害が起こると、この吸排気口から空調ダクトを通って水が建物内部に入り込み、設備の機能停止や社会インフラの停止を引き起こす恐れがある。
「ジャバッShut」はこのような浸水被害を防止するために開発したもので、空調ダクトからの水の浸入を検知すると、自重で止水板が落下しダクトを閉止することで室内の重要設備を浸水被害から守るものである。
また、電気や空気などの作動源を一切必要としないため、非常時にも確実な動作が可能である。
●内部構造図
①浸水検知槽
②連結棒
③止水板
④止水板ロックアーム
⑤ロックアーム受け台
●動作説明図
1、下部の浸水検知槽に水が流入すると、検知槽が下がり連結棒を引き下げる。
2、連結棒が下がるとラッチが外れ、止水板が自重で落下する。
3、止水板が落下した反動で、ロックアームが倒れる。
4、ロックアームが受け台にはまり、止水板を押し付けることで、確実な止水を行う。
②. 3時間耐火・防火ダンパ
従来の防火ダンパでは建築基準法により1時間の耐火性能が求められているが、原子力発電所などの重要施設向けに更なる耐火性能を持つ3時間耐火・防火ダンパを開発した(特許第5712277号)。
これは米国の製品安全規格(UL-555)の一部を取り入れたもので、ISO834で規定される加熱曲線に従い、加熱時間3時間で1110℃まで上昇させ、その試験前後で各部位の隙間が規定値以内となるよう、部材や構造を改良したものである。
ダンパ外観
耐火試験の様子
ダンパ加熱状態:炉外(左)、炉内(右)
加熱試験データ
━━ 国際標準化機構規格(ISO834)加熱温度条件
━━ 平均炉内温度(実測値)
③. 電解水を用いたマスク洗浄システム
原子力発電所構内で使用される作業用マスクの洗浄方法として、電解水を用いた場合の有効性を検証した結果、臭気除去と除菌効果が認められたことから、電解水を用いたマスク洗浄システムを開発した。
東京電力ホールディングス株式会社・福島第一原子力発電所では日々数千人の作業従事者が使用する全面マスクを介してのウイルス感染や、汗や皮脂に起因する臭気対策が問題となっていたことから、電解水を洗浄水として使用した場合の効果の検証を実施した。
その結果、微酸性電解水によりノロウイルスなどウイルスの活性が低下したこと、また、アルカリ性電解水を組み合わせることで、臭気の軽減にも有効とのデータが得られたことから、「電解水を用いたマスク洗浄システム」として装置開発を行い、同発電所内に納入した。
電解水を精製する装置は全てコンテナに収め一体化することで、現地工事を最小限としている。
システム概要システム概要図
④. ドレンレス冷房ユニット(シャワークーラー®)
夏場の工事現場やイベント会場などでは簡易的な冷房機器としてスポットエアコンが用いられるが、しかしながら、冷却範囲が狭かったり、発生する水(ドレン)の回収が必要であるなどの問題が有ったことから、ドレンの出ない一体型冷房ユニットを開発した(特許第4709426号)。
シャワークーラーは配管工事が不要で、電源さえあれば設置後すぐに運転が可能であり、冷却コイルで発生したドレンを蒸発処理し、排気と共に空気中へ放出するため、従来のスポットエアコンのようなドレン回収の必要が無い。
半円柱のボディ形状により1台で180度の範囲に冷風を送ることが可能であり、また2台を背合わせに設置することで円柱形状となり360度全周をカバーすることが出来る。
また、廃熱は機器の上部から吹出すことで周囲の温度上昇を防ぐ構造となっている。
⑤.挟まれ防止機構付き点検扉
室内外で気圧差がある施設で、扉の開閉を行う際に起こり得る挟まれ等の事故を防止するため、内開きと外開きの二つの扉の組合せによって圧力差を相殺し、安全な開閉操作を可能とする扉を開発した(特許第4070025号)。
扉で仕切られる前後の空間に圧力差がある場合、扉開閉の際に扉が急激に開いたり、急激に閉まるといった事象が起き、扉が体にぶつかる、指を挟むといった事故を招く要因ともなる。
挟まれ防止機構付き点検扉は外向きに開く主扉と内向きに開く副扉をリンクギヤでつなぎ圧力差を相殺する構造となっており、開閉時に余計な力を必要とせず安全な操作が可能であり、また、モータや圧縮空気などの補助動力を一切必要としない。
※(社)建築設備綜合協会主催 第9回 環境・設備デザイン賞 最優秀賞・受賞)
構造図
動作説明図
⑥.超高性能縦型ルーバ(レインキャプチャー)
空気と雨粒の持つ慣性力の違いを利用して雨を捕集する、新しい発想の超高性能縦型ルーバ(レインキャプチャー)を開発した(特許第3779235号)。
レインキャプチャーは、空気はスムーズに通しながらも浸入してくる雨粒は確実に捕集することが可能な超高性能縦型ルーバで、滑らかな曲線を描く羽根と、羽根の途中に設けた捕集突起により、空気は通しつつも雨水は確実に捕集。従来の縦型ルーバの問題点であったルーバ最下部からの水の再飛散も、独自の水切り構造により水溜まりを作らず、確実にルーバ外へ排出することが出来る。
また、風切り音などの発生騒音が小さく、高風速でも高い捕集効率を維持し、従来品に比べ圧力損失が小さいことから、リニューアル工事の際には既存送風機の能力を気にせずルーバの取替が可能である。
※(社)建築設備綜合協会主催 第7回 環境・設備デザイン賞 最優秀賞・受賞)
外観
羽断面
空気の流れと雨粒捕獲のイメージ図
下部水切り構造図
雨水捕集効率グラフ
圧力損失グラフ
⑦.連結式空気浄化装置(A.C.TRAIN)
フィルタ、ファン、操作盤を各専用台車に搭載し、分割軽量化により運搬や移動を容易にした連結式空気浄化装置(A.C.TRAIN)を開発した(特許第5910959号)。
フィルタセクション及びファンセクションの組合せが自由に選べ、汚染エリアの浄化等、緊急時や仮設を問わずあらゆる用途に対応が可能。フィルタセクションは汚染状況に合わせ、高性能HEPAフィルタや活性炭フィルタを選択または組合せでの使用が可能。
ファンセクションは単相100V,3相200Vの電源仕様をラインナップする他、居室用として静穏タイプも用意。操作盤を単独ユニットとしたことで、遠隔操作も可能となっている。
外観
機器構成
⑧.可搬式抗菌フィルターユニットと自立型感染防止フード
新型コロナウイルス飛沫感染防止対策を目的に、原子力事業部の汚染物封じ込め技術を応用した、ダクト接続型「可搬式抗菌フィルターユニット」と「自立型感染防止フード」を開発した。
「可搬式抗菌フィルターユニット」は、低騒音ファン、プレフィルター、抗菌HEPAフィルター及び操作盤より構成される小型のフィルターユニットであり本体にはキャスターが設置されて、移動が容易である。
抗菌HEPAフィルターとはガラス繊維濾材に溶菌酵素を化学的に固定化したものであり、ウイルスの不活化、細菌類に対する滅菌効果が有る。「自立型感染防止フード」は、患者の頭部を覆い排気を担うフードと、取付台座及び移動式架台により構成される。
「自立型感染防止フード」と「可搬式抗菌フィルターユニット」をダクトで接続し、フードから排気することにより、患者からの飛沫による医師、看護師の感染リスクを低減する。
更に、飛沫が含まれたフードからの汚染された空気は抗菌HEPAフィルターを組み込んだ可搬式抗菌フィルターユニットにより、確実にろ過され、ろ過された空気は室外に排気することで、患者のいる室内は陰圧に保たれ、周囲の部屋への空気の漏洩が防止できる。
また、「可搬式抗菌フィルターユニット」は単独で空気清浄機または排気処理装置として使用することができる。